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真野 正美
絵を描くというしごと
見知らぬ街角で不意に幼い日の感覚に包まれることがある。
私が生まれたのは、廃油で汚れた川と、黒煙を上げる煙突の林立した西大阪の街。工場裏の空き地を遊び場とし、労働者の汗の匂い、商店街の活気と人情に包まれて育った。同時に、裏山の木に登り、疎水プールで泳いだ京都東山の祖父母宅は自然との接点だった。
そんな少年期の思い出を、偶然出会った風景が浮かび上がらせてくれることがある。そんな時、一枚の絵が産まれる兆しがする。
パッションが起こる。
それは現場風景を借りて心の風景を描く作業の始まり。現場でスケッチを叩き、取材し、ディテールを写真に記録する。それらを使って3~12ヶ月で1枚の絵を仕上げる。
浮かび上がる記憶の断片と出会った現場を組み合わせて心の風景を編み込む作業。細密な技巧は私の表現手段だが、細かい表現に不向きな透明水彩絵具を使うのもこだわり。
おかげで、描き込む草木の葉っぱやトタン屋根の一枚ごとの境界にマスキングをしての作業だ。強いエッジ、爽やかな色合い、バックライトが発光したような光の表現と温度感を求めるため。ただし、その技巧がハートを超えてはならないのは自分の中の約束事。ひたすら時間をかけて魂を刷り込む。
それが私の仕事。
経 歴
1958年 | 大阪府生まれ |
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1978年~93年 | カーデザイナーとしてトヨタ自動車本社デザイン部所属 |
1993年 | トヨタを退社。愛知県から帯広市郊外に移住し画業を開始 |
1994年~05年 | 六花亭帯広本店ギャラリー,札幌市資料館等で個展 |
2005年〜2008年 | 中札内美術村「北の大地美術館」にて企画展「風便り」開催 |
2010年 | 児童詩誌『サイロ』601号より表紙絵を坂本直行氏から引き継ぐ |
2011年~16年 | 六花の森(中札内村)「真野正美作品館」展示 |
2017年 | 六花亭札幌本店「ギャラリー柏」にて作品展「ふるさとの呼ぶ声」 |
2017年 4月 |
中札内美術村に「真野正美作品館」開館 |
2018年 | 中札内美術村ギャラリー柏林にて「サイロ表紙絵100枚展」開催 |
2018年11月~19年4月 | 諏訪市原田泰治美術館にて企画展「北国の詩情」開催 |
2020年 | サイロ創刊60周年を記念し、六花の森に「サイロ表紙絵館」がオープン。601号から描き続けた表紙絵を一同に展示。 |